様々な要因によりスーツの需要が落ち込む中で、若い層にオーダースーツへの関心が高まっています。また、価格よりも品質重視へと多様化が進んでいるのも特徴的です。
フルオーダーやパターンオーダー、イージーオーダーなど、販売方法は複数あります。ここからは、オーダースーツの経営について、成功と失敗のポイントを解説します。
オーダースーツの魅力
従来のオーダースーツは、顧客から注文を受けてテーラーによって仕立てられていました。大量生産が可能な既製品では感じられないような、フィット感を得られるのが最大の特徴です。
オーダースーツの仕立てでは、まずは採寸を行います。それから型作り、裁断、仮縫いをして調整します。最後に縫製という手順を踏むため、テーラーとして熟練の技術が必要です。
テーラーによるハンドメイドのスーツは、顧客の体型にピッタリと合うように作られます。
手間暇かけて制作するため金額は高くなり、相場価格は17万円から20万円程度です。また、素材や生地によっても価格は異なり、高級なものだと数百万円になる場合もあります。
テーラーとして技術を取得するには、一般的に10年以上かかると言われています。技術だけではなく、顧客それぞれに合うデザインや顧客の好みを把握して生地を選ばなければならないため、センスも必要でしょう。
また、熟練の職人技術を引き継いでいくことも大切です。そのためには、若い層を惹きつけられるようなデザインのオーダースーツを提供するなどの工夫が求められます。
オーダースーツの需要
オーダーメイドのスーツは、三つの販売方法があります。まずひとつめは、生地選びからデザイン、型紙、縫製まで、テーラーが一括で行なうフルオーダーです。顧客の体型に合わせて作られているため着心地が良く、型崩れもしにくいなど、既製品と比べるとフィット感は段違いでしょう。
二つめは、主に量販店で取り入れられているパターンオーダーです。複数の規制サンプルからパターンを選び、サイズを調整します。既製品よりも、オーダーメイドに近い販売方法といえます。
そして三つめのイージーオーダーは、機械縫製です。CADを使い、顧客用に仕様型紙を調整して仕上げます。幅広いオプションの選択が可能なため、多数の百貨店やブランド店にて取り入れられている方法です。
縫製のほとんどを手縫いで行うハンドメイドの場合は、既製品よりも金額は高くなります。しかし、高品質であるハンドメイドに比べ、機械縫製であれば、数万円程度からの仕立ても可能です。
以前よりも安い価格で手に入れることができるようになり、オーダースーツの需要は高まってきています。一方で、高品質を求める富裕層もいることから、高額なスーツの売上も少なくはないでしょう。
一般的に、スーツはフォーマルな場面で着用されることが多く、季節によって需要が異なります。特に卒業式や入学式、新社会人のスタート時期に必要とされることが多いため、その時期に売上が高くなる傾向にあります。
オーダースーツの市場
スーツの需要は、オフィスカジュアルの普及やコロナ過での影響など、様々な要因で減少傾向です。また、新学期や新社会人シーズンなど特定の時期に需要が高まるなど、季節による変動もあります。ほかにも、景気の悪化や少子高齢化などの影響も受けています。
しかし、ミシンやCADなどを導入する店舗も増加してきており、比較的安い価格で購入できるようになってきました。とはいえ、職人の技術も必要であることは間違いありません。また、若い層にもオーダーメイドスーツへの関心が高まっている傾向があります。
オーダースーツの店では、テーラーによって顧客それぞれの体型に合わせて仕立てられます。フィット感や着心地の良さは当然のこと、型崩れしにくいなどの特徴があり、その魅力に気付いてもらう努力も必要でしょう。
生地やデザインを自由に選べるため、既製品と同価格のものから、高額なものなどさまざまです。また、自分だけの一着を作りたいという顧客の要望に応えられるのが、テーラーによるオーダースーツの特徴でしょう。
男性の衣類の販売は、東京や大阪などの大都市圏に事業者が集中しています。アクセスがしやすく、人口密度が高いために需要が高まっているといえるでしょう。
オーダースーツの開業に必要なこと
オーダースーツを経営するにあたり、形態方法についてよく検討することが必要です。まずは、店舗を構えるのか、無店舗型にするのかによっても準備するものが異なるでしょう。
また、仕入れから全行程を自社で行うのか、一部を外注するのかも重要なポイントです。主に必要な設備は、ミシンやアイロン、そして自動車など、それほど高価なものではありません。
生地などの素材については、専門業者から取り寄せるのが一般的でしょう。しかし、高級なものであれば、肌ざわりや素材など、実物を見て確かめることが重要です。
高額なハンドメイドのオーダースーツは、富裕層の顧客が購入します。そのため、リピーターになってもらえるように、修繕などのアフターサービス体制を整えることが必要です。
テーラー業界の事業者は、東京都や大阪府などの大都市圏に密集しています。しかし全国的に様々な要因から需要が減り、従業員や熟練の職人も少なくなってきているのが現状です。
ここ数年は、コロナによる行動制限がなくなったこともあり、販売業績はプラスに向いてきています。
オーダースーツの経営を成功させるポイント
熟練のテーラーは、高齢化などによって減少傾向にあり、人材を確保するのも難しくなっています。そのため、一部の業務を外部委託するなど、業務の効率化を図ることも必要でしょう。また、経営者も同じく高齢化の問題があり、経営統合やM&Aについて検討することも事業継続のための手段となってきています。
オーダーメイドのスーツは、手頃な価格の既製品が市場に多く出回っているため、市場では競争が激化してきています。品質の高いハンドメイドのスーツの需要が見込まれているなかで、ほかとの差別化を図ることも重要です。
顧客それぞれの好みに合ったデザインや素材を選べる自由さのあることが、オーダースーツの特徴です。既製品と同等価格もあれば、数十万円や、高級な素材であれば数百万円など高額のスーツもあります。
顧客にとっては、多くの選択肢から提供できることを知ってもらう必要があります。そのため、ECサイトやSNSの活用も検討が必要でしょう。
オーダースーツ店経営の失敗ポイント
オーダースーツの市場に新規参入する企業は増加傾向にあります。そのため、業界内では競争の激化に伴い、技術継承やノウハウ、さらには業務効率化が進められているのが現状です。各事業者は、業界再編に向けて積極的に参加することが求められています。
顧客からオーダースーツの発注を受けてから完成まで、長期間にわたって支払いが完了しない場合が多いでしょう。しかし制作している間にも、材料の調達費や人件費など、経費は発生しています。代金を回収するまで損益計算書に反映されないため、収支のバランスを考えて経営する必要があります。
また、熟練のテーラーなど人材確保も重要です。技術を継承するためにも、外部委託を利用するのもよいでしょう。さらには、職人の熟練の技術を活かす方法を検討することも必要です。
オーダースーツの魅力を若い層にも伝えるためには、新しいデザインを取り入れるのが大切です。また、オンラインでの注文受付や、納期を短くすることも大事なポイントでしょう。
以前は、顧客と直接対面する方式が主流でした。しかし、顧客の元へ出向いて採寸や納品するなど、柔軟に対応する方法を検討することも必要です。営業方法を対面式から別の方法へ転換し、顧客との接点を多様化することで、需要拡大に繋がる可能性が広がるでしょう。
まとめ
オーダースーツを経営するには、どのような事業形態にするかなど、よく検討したほうがよいでしょう。販売方法についても、フルオーダー、パターンオーダー、イージーオーダーによっても必要な設備などが異なります。
現在は様々な要因によって、安価なスーツの人気が高まっています。そのため、事業者が減り続け、業界全体で需要は減少傾向です。
しかし、若い層にオーダースーツの需要が高まってきており、営業方法や販売方法など多様化が求められています。また、キャッシュレス化の普及に伴い、キャッシュフローの改善も図れてきました。一般的には、高額な開業資金は必要ないものの、経営方法や事業形態についてよく検討することが必要です。